暗号を積極的に使う理由

(更新日: 2017/04/13)

Googleは暗号を積極的に使っていることが知られています。暗号を積極的に使う理由を紹介します。

信頼境界線の中で暗号を使っても、内部に侵入を許した時点で終わり」なので、「暗号を使っても意味がない」と考えているかも知れません。「リスクの廃除」だけが、セキュリティ対策ではありません。「リスクの緩和」もセキュリティ対策です。暗号は侵入を許してしまった場合のリスク緩和に効果的です。

境界防御の限界

境界防御はセキュリティ対策で最も重要な要素の1つです。境界防御が有効に機能していれば、安全性は維持できます。しかし、境界防御に失敗した場合にデータの安全性が全く維持できない、というケースがあります。

  • SQL/XPath/LDAPインジェクションでデータを盗まれる
  • コード実行でデータベースを丸ごと盗まれる
  • ディレクトリトラバーサルでファイルを盗まれる

などです。

そもそも、データは「最小権限の原則」に則り、必要最小限の権限で利用するのが理想的です。例えば、

  • WebユーザーがSQLデータベースにアクセスする場合、データベース固有のユーザーとしてアクセスし、データのアクセス権限を最小にする

ことが理想的です。

しかし、現実的にはWebアプリがDBサーバーにアクセスする場合、全てのユーザーのデータに完全にアクセスできる、スーパーユーザーのようなアカウントだけ1で、データベースにアクセスするアプリケーションがほとんどです。

クリティカルなユーザーデータだけでも、暗号化していれば盗まれる/改竄されるリスクを低減できます。

 

暗号化のメリット

暗号化のメリットは、境界防御が失敗した場合の安全性維持、が可能なことにあります。先程の例もですが、TLSプロトコルの有り/無しの違いを見れば、暗号化のメリットは明らかです。

内部ネットワークの場合、暗号化していない通信であっても、基本的には安全であるべきです。内部ネットワークは境界防御により守られているはずです。このため、Webサーバーとデータベースの通信は暗号化されていないことも多いです。

しかし、万が一Webサーバーとデータベースサーバーの通信の途中にあるルーターに侵入された場合2、つまり境界防御が破られた場合、攻撃者は通信の内容を簡単に盗めます。

TLSはそもそも通信経路と信用できないインターネットでは必須のセキュリティ機能ですが、信頼できる内部ネットワークの場合、「転んだ時の杖」の役割があります。

信頼境界線内での暗号化の目的は

  • 境界防御に失敗した場合の、多層防御として機能

する点にあります。

 

暗号化を有効に機能させるための必要条件

信頼境界線内での暗号化の目的は

  • 境界防御に失敗した場合の多層防御

です。多層防御として機能させるには、

  • キャッシュカードと暗証番号を一緒に保管する

ようなことしてはいけません。

  • Webサーバーの設定ファイルに暗号鍵が記載されている状態
  • データベース内データの暗号化鍵がデータベース内にある状態

これらは「キャッシュカードと暗号番号を一緒に保管している」状態です。暗号化のメリットを活かすには、鍵を安全に管理することが重要です。

境界防御に失敗していることが前提なので「信頼境界線の中だから安全」は通用しません。既に破られた境界とは別の信頼境界を引き、防御する必要があります。

参考:

 

まとめ

「え、ここでまとめ?」と思ったかも知れません。

「安全な鍵管理」は本当に大変なことなのです。”鶏と卵問題”のような問題です。ブログにさらっと書いてしまえるような内容ではないです。

鍵管理については、簡単なまとめなら

https://www.owasp.org/index.php/Key_Management_Cheat_Sheet

より本格的な物なら

https://www.ipa.go.jp/security/fy22/reports/tech1-tg/b_04.html

などを参考にしてください。

境界防御についてはこのエントリを参考にしてください。

鍵情報を環境変数として渡している場合、これで完璧という方法ではないですが、

  • 鍵を環境変数として渡し、鍵をメモリに保存した後、鍵を保存した環境変数を消去

すれば、多少リスクを減らせます。

データベース内のデータを暗号化する場合、(最小権限の原則に則り、ユーザー毎に別々の暗号鍵を使うことを想定)

  • 暗号化鍵は別の鍵管理用のデータベースに保存する
  • データベース内には暗号化鍵のSaltとなる情報のみを保存し、暗号化鍵はHMACなどで導出する

これらでリスクを減らせます。厳重にセキュリティ対策を施した専用の鍵管理サーバーを置けない場合、後者を選択することになります。以下のような形で鍵を導出します。

のようにします。当然ですが、$MASTER_KEYはデータベースとは別の安全な場所に保存します。

 


  1. 私は少なくとも、データベースのアクセスには”読み込み専用”と”読み書き用”のデータベースアカウントを利用することをお勧めしています。フレームワークが対応していないので、困難な場合が多いですが。。残念ながらフレームワークの多くは「セキュリティのベストプラクティス」を忠実に実装していません。 
  2. 実際、ルーターのセキュリティ問題は結構多く報告されています。攻撃される可能性はそれほど高くなくても現実的なリスクと言えます。 

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