「悪魔の双子」という攻撃はセキュリティに詳しい方ならご存知と思いますが、あまり一般的に認知されていないような気がしてきたので簡単に書いておきます。日本語版Wikipedia、はてなにも「悪魔の双子」は登録されていないようです。さすがに英語版Wikipediaには載っていました。
日本語のニュースでは、少なくとも、WIRED NEWSに米国イベント会場で「悪魔の双子」のアクセスポイントは頻繁に発見される、と言う趣旨のニュースは出ていたような気がします。(記憶が曖昧。自信なし)
英語版Wikipediaの定義によると、悪魔の双子(Evil Twin)とは
An evil twin is the concept in fiction (especially science fiction and fantasy) of someone equal to a character in all respects, except for a radically inverted morality.
とされています。日本語に訳すと次のような感じになります。
悪魔の双子とは架空の物語(特にSFやファンタジー)の登場人物で、正反対の道徳性を持つこと意外は全く同じ特徴をもつ登場人物のことです。
「悪魔の双子」による攻撃とは、イベント会場などで利用者の利便性の為に無料で提供される無線LANのアクセスポイントを装い、「悪魔の双子」のアクセスポイントを経由したパケットからユーザ名やパスワード等の情報を盗み取る攻撃の事です。アクセスポイントはイベント会場だけでなく、会社や学校、公衆無線LAN、誤った設定のアクセスポイントなどに偽装している場合もあります。「悪魔の双子」による攻撃は無線LANのアクセスポイント以外でも応用可能ですが、無線LANのアクセスポイントを偽装した攻撃を「悪魔の双子」と呼ぶ事が普通のようです。
ネットワークのパケットを盗み見ても価値のある情報はそう簡単に盗み取れない、と思うのは間違いです。今でも暗号化が全くないPOPやIMAPアクセスは普通に利用されています。多くのユーザがメールのアカウントのアカウント名とパスワードは他のアカウントのIDとして利用しています。
登録済みのアクセスポイントに自動接続する仕組みは非常に便利ですが、メールクライアントを立ち上げたまま「悪魔の双子」のアクセスポイントに接続してしまうとメールアカウントのユーザ名とパスワードが盗まれる可能性があります。
アメリカのイベント会場では「悪魔の双子」が見つかっても珍しくない状態になっているようです。日本の状況をレポートした資料は見た事がないですが、用心するにこした事はありません。
イベント会場など他の場所では無線LANを使わないから大丈夫、ともいえません。例えば、社員が職場に「悪魔の双子」を設置した場合はどうでしょう? 大丈夫でしょうか?
蛇足:
時々、無線LANへのアクセスをMACアドレスベースで制限しているので大丈夫、と勘違いされている方を見かけます。WEPで暗号化していても(当たり前ですが)MACアドレスは暗号化できません。最近のNICはMACアドレスを自由に変更できます。したがってMACアドレスでアクセス制限をしてもセキュリティ対策として意味がありません。
ところで「悪魔の双子」による攻撃は無線LANがはやる前から懸念されていた攻撃方法です。「悪魔の双子」という注目を集めやすい名前から急速に認知されるかもしれませんね。(何年も前からEvil Twinは無線LANのアクセスポイント偽装をあらわす用語として使われていたように思えます。どうだったかな?)